あったらいいなシンポジウム(2024/11/24)体験記
11月24日開催のあったらいいなシンポジウム「子どもたちの危機を救え」が無事終了しました。100名あまりの参加をいただき、短い時間でしたが各領域の対話を進めることができました。
ここに参加者の一人として、ご報告をしたいと思います(堀の私見です)。
「岐阜県の子どもに関わる現状」新藤恵里先生(中央子ども相談センター)
児童相談所、養護学校、福祉事務所、病院、発達支援センターとさまざまな領域での経験を踏まえてお話をいただきました。子ども相談センター(児童相談所)の仕事、相談の現状(相談件数の著しい増加、24時間体制での対応)、子相職員の働く過酷な様子を実際にお伺いし、「もはや子相だけでは太刀打ちできない。他機関連携が必要」「予防的支援ができるよう地域の力をつける必要がある」の新藤先生の声を地域がしっかりと受け止める必要性を感じました。
小児科医の立場から 加藤智美先生(こころとそだちクリニックあすなろ)
子供時代に心の問題に関心をもったところから始まり、医師になってからも、心の問題を主体的に追求し続けている加藤先生の臨床姿勢に心打たれました。特に、子どもの支援から親自身のトラウマに関心を持たれ、有効だと思われるトラウマ治療をご自分なりにいろいろ探して学び続けられていること、それを医療のなかで実践しようとされていることに感銘を受けました。すべてを医療に求めるのではなく、地域や学校でできることがあるはずという訴えも大いに説得力がありました。トラウマへの治療は時間も手間もかかりますが、「私にしかできない大変なケースは私に」の言葉からは加藤先生の温かさと気迫を感じました。
児童精神科医の立場から 関正樹先生(大湫病院)
はじめに関先生の児童精神科外来の現状をお話をいただきました。年間初診数や年間受診者数、診断書数(なんと500通!)を聞いて、驚きました。児童精神科医が少ないなかで、児童精神科の初診待ちが数ヶ月かかるのも仕方がないと思える壮絶な数でした。
そんなご経験の中で、関先生は、
・地域で出生者1割が利用しても破綻しないシステムが大切
・地域で医療のレベルまで完結することは困難
・全てを包括できる機関はない。それぞれのできることがあるはずで、そのサブシステムをつなぐインターフェースをつくることが重要。
・精神科と小児科医や地域資源との連携は不可欠
を語られたあと、診断書のための受診問題について提議されました。医療機関が診断書作成に追われているが、通級利用のためだけなら診断書は必要ないはず。発達障害についても不登校についてはも、学校や福祉サービスが主体的に動くことができたら、病院は病院でしかできない医療サービスが提供できることを伝えられました。最後に「連携にあたって、お互いの知識をもとう」では、医療機関は何が得意で何が不得意か、児童発達支援事業所は何が得意で何が不得意か、不登校支援において学校の先生は何が得意で何が不得意か、虐待事例に対して児童相談所でないとできないことは何か、市町村でもできることは何か、それはどんな場合かを知ることがとても大切であると訴えられました。
学校の現場から 早川三根夫先生
早川先生はご自分が教育長だった時代に自死された子どものことから話し始められました。子どもと親の思い、調査してわかった学校の問題、子どもの個性を折るような教育ではいけないと考え草潤中学をつくっていったことです。切々と子どもと親の思いを語られるなかで、早川先生がどれほどこの問題を悔やんでおられるか、これを防ぐために教師人生をかけてこられたかが伝わるように感じられました。
全国に誇れる中学校には悲しい歴史と子どもを守るために戦う人がいるのだとわかりました。
フリースクールの立場から 平真未先生
「吉田川」の美しく賑やかな写真からお話は始まりました。夫婦ともに他県出身なのに、この吉田川に惹かれて平さん家族は郡上に移り住み、フリースクールをつくられたそうです。
活動の風景にはいつも「自然」と「笑み」がありました。傷ついた子どもにとっての「居場所」「安心できる大人」「仲間たち」がそこにはいて、平先生との関わりを通して、少しずつ前に進んでいく様子が語られました。先の先生方のお話に「居場所」「安心」「仲間」の話題は出ていましたが、平先生の具体的なお話から、学校以外にそうした場所があることの大切さをまさに実感できたように感じました。
フロアディスカッションの要約
・今回コミュニティセンターで開催できたのがよかったと思う。「社会教育」としてこの取り組みを考えていくことを提言したい。
・通信制の高校と中高生対象の放課後デイもある。当初は関わりを持てなかった子供達が、次第に関わりを持つことができるようになっていく。安心できる居場所、大人がとても大切と思う。
・通級に通うのに法的には診断書はないはず。
・キャリア教育の現場で感じていること。学校で理解されないことも多いが、子どもの実情に合わせて次につながるように支援している。
・スクールカウンセラーとして学校で見ている現状。
・こうした支援者の集いでは「親がわかっていない」と親批判になることがある。それは親に対する専門家のアセスメント不足。その親のできることをアセスメントし、支援を考えていくことが大切。当事者の思いを置き去りにしない。
・地域にある福祉サービスを知ってほしい。理学療法士、作業療法士、心理職を雇っている相談支援事業所があり、訪問支援も含めて、さまざまなサービスが提供できる。